〜第4話〜燃えよ中性脂肪…!無理なく食事をコントロールする秘訣とは

家政夫の青菜(あおな)です。最近、小林家のお母様、佳恵(よしえ)さんと長女の春香(はるか)さんは、お二人でウオーキングを始めたご様子。「ながらエクササイズを始めたら、からだを動かすのがたのしくなった!」と張り切っていらっしゃいます。「せっかくだし、パパも始めたら?」とお誘いをしても、お父様の茂(しげる)さんは、お留守番されているようです。そんなある日、茂さんの健康診断の結果をめぐって小林家にちょっとした事件が…

燃えよ中性脂肪…!無理なく食事をコントロールする秘訣とは

「今日もウオーキング、気持ちよかったね!」

佳恵と春香がウオーキングを終えて自宅に戻ると、茂とワタルがリビングで、映画を観ながらスナック菓子を食べていた。

「あ、またお菓子!ママからも注意してよ〜」

「パパもワタルも、もう少しで晩ご飯だっていうのに、いい加減にしなさい!」

「ちょっとだけだし、大丈夫だって。映画館ごっこしてるんだよな〜、ワタル」

「そうだよ!お姉ちゃんも一緒に食べようよ」

「もう夕方だよ、わたしはいらない」

「そうよ、3時のおやつって時間じゃないわ。ほら、パパもワタルもおしまい!」

茂とワタルの最近のお気に入りは、お菓子を食べながらアニメ映画を観て、一緒に泣いたり笑ったりすることだ。佳恵と春香がいないときは、大好きなキャラクターが登場する冒険ものの映画を二人でたのしんでいる。親子の微笑ましい光景ではあるものの、「次は何のお菓子にする?」と、映画の内容より、お菓子の相談をしていることが多く、佳恵は心配していたのだった。

お菓子を食べながら映画鑑賞する茂とワタル

「ほんとに、二人ともお菓子が好きなんだから…。ワタルにはあまり食べさせないでって、パパにキツく言っておかなきゃ」

佳恵が着替えをしに2階の寝室に入ると、ふとローチェストの一番下の引き出しが少し開いているのに気がついた。

「あらあら、開けっぱなし…」

引き出しを戻そうと近づくと、隙間から紙のようなものがちらり。無造作に突っ込まれたその紙を何気なく手に取ってみると、「健康診断結果通知書」と書かれている。

「これって、パパの…。ん、赤い数字があるじゃない。なになに…」

その数字を指でたどると、基準値超えの中性脂肪の値。そして、「再検査」の三文字が。

「パパッ!ちょっとこっちに来なさーいッ!!」

怒る佳恵

佳恵の甲高い声が、小林家に響き渡った。

-翌日

青菜が小林家を訪ねると、不機嫌そうな佳恵としゅんと肩をすぼめた茂がリビングにいた。そして、目の前のダイニングテーブルには例の健康診断通知書が置かれている。

「青菜さん、今日はここに座ってパパの相談に乗ってほしいの!」

青菜が席に着くや否や、「これ見てちょうだい!」と、佳恵が赤い数字をトントンと指で示した。

「これは、まずいですねぇ…」

「パパったら、診断結果を隠してたの!再検査って書かれてるくせに、間食はやめないし、食べすぎだし、運動はしないし、本当にどうしようもないのよ」

すごい剣幕でまくし立てる佳恵のとなりで、茂はうつむき黙ったまま小さくなっている。

「自分のことでしょ!パパからもちゃんとお願いしなさい!」

佳恵の声に、茂はそっと顔を上げ、青菜を見つめてつぶやくように声を発した。
「お、お願いします。助けてください、青菜さん…」

青菜は、茂に向き合って真剣な面持ちで話し出した。

「茂さん、中性脂肪値が高い状態が続いていると、動脈硬化が進んでしまうことはご存じですか?放っておくと、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞といった深刻な疾患につながる危険があります。目立った自覚症状がないため放置しがちですが、健康のためにもこの結果を無視してはいけません」

「はい、ごもっともです…」

「中性脂肪の数値を下げるために、今すぐ対策を始めましょう」

中性脂肪の数値を下げるには?

「中性脂肪には、エネルギー源として働く大事な役割があります。一方で、摂りすぎてしまうと脂肪組織に蓄積されてしまいます。これが、中性脂肪の数値を上げる原因なんです。中性脂肪は食事の影響を受けやすいので、食事のコントロールがカギになります」

「要するに、食べすぎはよくないってことよね?」

「そうですね、食べすぎはもちろんですが、ほかにも注意しないといけないことがあります」

「まさか、僕の好きなお酒も…」

「そのとおりです、茂さん。一般的には、次の5つの要素に当てはまると、中性脂肪の数値が高くなりやすいといわれています」

中性脂肪の数値が
高くなりやすい要素

1.肥満 2.運動不足 3.夕食の過食 4.アルコールが多い(量・頻度) 5.炭水化物の摂りすぎ(果物、お菓子など)

「パパ、全部当てはまるじゃない!」

「全部じゃないよ。肥満度の数値は悪くなかったんだよ!」

「も〜、どこまで楽観的なのよ!」

「茂さん、晩酌は週にどのくらいなさっていますか?」

「毎日よ、ま・い・に・ち!」

「ママ、毎日じゃないよ、数日続くこともあるけどさ。おつまみを食べながらお酒を飲んでるし、肝臓に悪い飲み方はしてないつもりだよ」

「おつまみを食べながらお酒を飲むのは悪くありませんが、意識的に休肝日を設けることが大事です。少なくとも、週に2回」

「週に2回も!?」

「『肝臓とお酒』の関係は、『人と仕事』の関係にも似ているんですよ。毎日お酒を飲むことは、休日も出勤して、休みなく働いているようなものです。そうすると、当然体は疲弊してきてパフォーマンスが落ちますよね」

「うん、それはそうだね」

「茂さんが週休2日で、週末はリフレッシュされているのと同じように、肝臓にもお休みが必要です。飲酒量に気をつけて、週2日の休肝日が維持できていれば、肝臓は良いコンディションで機能できるといわれています」

「なるほど。肝臓を人に例えるとわかりやすいね」

「ほんと、休みって大事よね」

「肝臓は『沈黙の臓器』と呼ばれています。悲鳴をあげる頃にはすでに肝臓の負担が過剰な状態です。人と同じように、週に2日程度は休ませてあげる優しさが大切なんです」

「まあ、パパは週2日といわず、もっと減らしてもいいけどね」

「え〜、勘弁してよ」

「あなたの健康のためなんだから!それで青菜さん、揚げ物はダメとか、控えたほうがいい食べ物はなにかしら?逆に、積極的に食べた方がいいものはある?」

「大切なのは、脂質よりも炭水化物の摂取量を減らすことです。炭水化物はご飯やパン以外にも、お菓子や果物類にも含まれるので、主食だけ減らせばよいというわけではありません」

「そうなんだ〜、お菓子もね…」

佳恵の冷たい視線を感じ、茂は目をそらすようにテーブルの角を見つめている。

「それと、魚中心の食事にして青魚を食べてください」

「青魚ってことは、サバとかサンマ、あとはアジとかよね?」

「そうです。それらの青魚には、不飽和脂肪酸のEPAやDHAという成分が含まれています。血液をサラサラにする効果が期待できるので、中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロールの値が気になる人は、積極的に摂ることをおすすめします」

「よかったじゃない、パパ!どれも大好物でしょ?」

「そうだね!お刺身はおつまみにもなるし、すぐにでも始めてみようかな。もちろん、休肝日はちゃんと作るよ」

「その調子ですよ、茂さん」

積極的に摂りたい食べ物

EPA・DHA

「でも、いきなり魚中心の食事になんてできるかしら」

「お子様たちもいらっしゃいますしね。すぐに魚中心の食事にすることが難しい場合は、魚と肉を半々にすることを目指してはいかがでしょうか。それから、外食時やお弁当を購入するときなどは、必ず魚を選ぶこともポイントです」

「それならできそう!ね、パパ?」

「あと、食べすぎはよくないです。特に、夜に高カロリーのものを食べるのは控えてください」

「カロリーの高いものは絶対に食べちゃダメかな?」

「脂っこいものなど、高カロリーのものをどうしても食べたい場合は、昼に食べた方がいいですね」

「じゃあわたしは、夜に高カロリーのメニューを出さないように気をつけるわね」

「いいですね。あとは、脂肪を燃焼させる効果があるといわれている緑茶も積極的に飲んでください」

「緑茶?大好きだよ!それなら手軽に取り入れられるし助かるな」

日々の食事に緑茶をプラス

緑茶

「今日からは再検査に向けて家族一丸となって頑張りましょう!」

-数か月後の土曜日

青菜が週末に小林家を訪れるのは久しぶりだ。今日は、茂と佳恵が夫婦でお出かけする日。夕方まで、春香とワタルのことをお願いしたいと頼まれたのだ。

「おはようございます、茂さん」

「おはよう!聞いてください、青菜さん。アドバイスどおり食生活に気をつけていたら、ほんの少しだけど中性脂肪の数値が下がってたんだよ!」

「それはよかったですね!」

「もちろん、まだまだ努力は必要だけどさ。再検査で先生に、『前回よりも数値が改善していますね。この調子で頑張りましょう』っていわれたよ」

「茂さんの努力のおかげですね。素晴らしいことです」

「ありがとう。ただ、ワタルには『お菓子食べないからつまんない!』って言われちゃってるけどね」

茂が苦笑いしているその後ろで、佳恵が「いらっしゃい」と青菜に声をかける。なんだかとても眠そうな顔つきだ。

「おはようございます、佳恵さん。昨晩は、遅くまでお仕事されていたんですか?」

「いや、ママってば、海外ドラマにはまっちゃってさ。最近、暇があれば深夜まで観ているから、単純に寝不足なんだよ。寝付きも悪くなったとか言ってたし。今日は出かける予定なのに、まったくもう」

「そうでしたか…」

茂の心配をよそに、佳恵は、「ふわ~ぁ」と特大のあくびを放った。

「青菜さん、来てもらって早々ごめんなさい。出かける前の眠気覚ましに、濃いめのコーヒーをお願いできる?」

「もちろんです、お待ちください」

青菜は、寝不足の佳恵を心配しながらやかんを火にかけた。足元に飼い猫のムギがやってきて、のどを鳴らしながら甘えている。

監修者

齋藤亜紀子

管理栄養士/自然療法士(ナチュロパス)
日本の病院で臨床での栄養指導経験を経て、未病・予防領域に興味を持ちオーストラリアにて自然療法士の資格を取得。食事だけでなく、心と身体のトータルケアを楽しんで行うことにより、もっと健康な人を増やせるよう、健康情報の紙面監修やレシピ開発など精力的に活動中。

イラストレーション

ボブa.k.aえんちゃん