『WELMAG』の特集「家活」では、雨や湿気で心身が振り回されがちな季節に、おうちで取り組んでみたい習慣を集めました。「家ごもり」を口実に、心と身体をいつもより丁寧に労ったり、ずっとやりたかったことにチャレンジしてみたり。おうちの時間を充実させることで、家族の会話が増え、絆も深まるかもしれません。美容や運動、ファッション、食、仕事といったライフスタイルの切り口から、新しい生活習慣を始めるきっかけを、お届けします。
リラックスできる空間のつくり方
梅雨どきや蒸し暑い日が近づくと天気によって体調を崩しやすかったり、気分が上がらない日も出てきます。
基本的には晴れて、そよ風が吹くような気持ちのいい気候が好きですが、残念ながらそればかりは選べませんね。
自宅にいる時間が増える時期は、家の中を心地よい空間に保つようにいろいろな工夫をしています。
料理家の私は自宅での撮影や原稿書きなど、自宅で過ごす時間がとても多い仕事です。中でもキッチンやリビングは、一日の大半を過ごす場所ですので、日頃からストレスを感じない空間づくりを心がけています。
キッチンやリビングはものが多い場所ではあるのですが、自分の周りにはなるべく心地よさを感じるキッチン道具やインテリア小物などを置くようにしています。
特に人の手でつくられた温かみが感じられるもの、たとえば、ザルやかご、陶器や木など、自然素材のものなどが私にとっては心地よいと感じるようです。自分の好きなものを集めていると自然と同じような素材のものが集まり、安らぐ空間につながっていくと思います。
空間づくりにおいて、私が特に大切にしているもののひとつが「香り」です。料理もそうですが、おいしさや心地よさを感じるために、香りは欠かせないものだと思っています。
シーンに合わせた香りで、心地のいい空間を
私は自宅の場所によって、「香り」をいろいろ変えて楽しんでいます。
香りや味は記憶を呼び起こすものですよね。ですので、玄関を開けたときの印象はとても重要だなぁと思っています。日々仕事の来客が多いため、まず玄関を開けて不快に思わないように、玄関の香りには一番気を使っています。
すっきりと爽やかにヒバのチップ(木を乾燥させてあるもの)をおいて、香りを漂わせています。
リビングにはヒバチップにセージやラベンダーなどリラックスできる甘い香りのオイルを少し。来客の方も使用するトイレは、すっきりとした香りのミントやユーカリなどのアロマオイルを。
ヒバやミント、ユーカリには消臭除菌効果もあるので一石二鳥。これらのアロマオイルを数滴たらした水で雑巾がけをするのもおすすめです。
料理を仕事にしているため、おいしそうな料理の香りを超えないことも重要。いらっしゃる方がみなさん、ほのかな香りで、心地よい空間だなぁと思ってリラックスしていただけたらいいな、と。
香りの工夫は、お客様に楽しんでもらう演出のひとつです。
洋服を選ぶように、香りを選ぶ
もうひとつ、リビングで楽しんでいる香りが「お香」です。毎日、朝起きたらまず窓を開け、お香を一本焚き、お部屋の空気を循環させます。
そして、さらにもう一本焚いて、次は香りをお部屋に漂わせます。そうすると、お部屋の中の空気がすっきりとし、お天気の日も雨の日も「今日一日、良い日になりそう!」と一日が始まります。
ヒバもお気に入りのお香も自然由来の香りです。人工的な香りではなく、自然の中で生まれる香りは料理と通ずるものがありますね。
私自身は、料理の邪魔になるので強い香水などは使用しないようにしているため、ふんわりと空間を香りで包んでくれるお香がぴったりなのです。
自宅で育てているハーブも然り、お天気の日はハーブを摘んで小さなブーケにして、リビング、キッチン、トイレ、洗面所などに飾ったり、ミントやラベンダーはハーブティーとしてフレッシュな香りと味を楽しみます。
ちょっとしたことなのですが、長雨が続く日には気分も爽やかにしてくれるありがたいアイテムです。
家にいる時間が長い梅雨の季節だからこそ、思いっきり自分にとっての心地よさは何かを追求して、リラックスできる空間づくりを見直すのもこの時期ならでは。
衣替えや片付けもして、好きな香りを漂わせて、好きな音楽を聴いて、特別なことはないですが、香りや音は私のなかで健やかな時間をくれる大切な必需品。
季節や気分によっても、お気に入りの香りは変わります。季節によって洋服を変えるように、その時の気分に合った自分らしい香りを纏うと、心が満たされる時間を過ごすことができるのです。
Essayist
ワタナベマキ
料理家。雑誌や書籍、イベントなどで幅広く活躍。グラフィックデザイナーを経て料理家の道へ進む。日々食べるものを美味しく丁寧につくるお弁当や朝ごはんなど、毎日の料理の参考になる著書を多数出版。近著に『マキさんの極上シンプルおにぎり』(ワン・パブリッシング)『日本の一年、節目の一皿:二十四節気七十二候+行事いろいろ -食で季節を愛でる- 』(小学館)がある。
公式HP
CREDIT
Text&Photo / Maki Watanabe
Edit / Kazumasa Yamada
Production / Quishin Inc.