〝金継ぎ〟には、大切な人との関係性を新しく繋ぎ直す力があります

ライフスタイル

2025.11.26

割れた器を修理しながら、新たな価値を宿らせる「金継ぎ」。その魅力に取りつかれ、金継ぎ師として活躍されている持永かおりさんに、自分の手でモノを生み出す楽しさについて伺いました。

〝金継ぎ〟には、大切な人との関係性を新しく繋ぎ直す力があります
教えてくれたのは持永かおりさん
持永かおりさん

金継ぎ師

国産漆にこだわり、陶器やガラス、食器、置物などさまざまなワレモノの修理を手がける。作品の美しい仕上がりに定評あり。金継ぎ修理のご依頼は「モノ継ぎ」HPより受付中。
公式HP→https://www.monotsugi.com/

趣味で始める人も増えている日本の伝統技術〝金継ぎ〟とは

金継ぎとは、割れたり欠けたりした器を漆で接着し、継ぎ目に金や銀を施して美しく修繕する日本の伝統技術です。室町時代に茶の湯文化と共に発展し、傷を活かしたその独特な不完全さを、個性として愛でる美意識が根づきました。最近ではその魅力に注目が集まり、趣味としての人気も高まっています。

持永さんが修繕した器。何度も漆を塗り重ねることで、少しずつ完成される。
持永さんが修繕した器。何度も漆を塗り重ねることで、少しずつ完成される。
修繕の基本と応用をステップごとにわかりやすく解説した持永さん監修の著書『金継ぎ上達レッスン【新装改訂版】』(メイツ出版)
修繕の基本と応用をステップごとにわかりやすく解説した持永さん監修の著書『金継ぎ上達レッスン【新装改訂版】』(メイツ出版)

Q金継ぎの魅力を教えてください
A「偶然から創りだされる美しさと出会い、心震える瞬間」

大切なモノが壊れるのはとても悲しいことですが、漆で丁寧に繕えば再び使えるようになります。そして、偶然生まれたその傷跡を隠さずに景色と見立てて愛でる。それこそが金継ぎの魅力ですね。直す工程で、信じられないほど美しい景色が現れる瞬間があるんです。修理なのに創作のような一面もあって。人の作為の及ばない、偶然と必然から生まれたその景色を、ご自身の器で感じてほしいです。

漆は湿気を取り込むことで固まるため、湿度管理が重要。そのため、“むろ”と呼ばれる木箱や棚で硬化乾燥させます。
漆は湿気を取り込むことで固まるため、湿度管理が重要。そのため、“むろ”と呼ばれる木箱や棚で硬化乾燥させます。

Q金継ぎ師としてのやりがいは何ですか?
A「モノを修繕することで人と人との心や思い出まで繋ぎ合わせられること」

亡くなられたお兄さまが大切にされていたという花瓶を修理した時のことです。依頼者さまのお母さまが大変落ち込んでいたようなのですが、完成した花瓶を見て、「兄との思い出が蘇ったようだと喜んでいる」とメッセージをいただいたんです。その時、ふと、金継ぎはモノを直すだけじゃなくて、人と人の心も繋ぎ直すことができるのだと気づきました。それからは、いっそうモノの向こう側にある、誰かの思いを大切にしながら、金継ぎを行っています。

Q金継ぎは初心者でもできますか?
A「漆で拭き上げるだけで美しく丈夫に生まれ変わる〝ふきうるし〟がおすすめ」

金継ぎは、初心者でもできます。もし、難しそうだと感じる場合は、身近にある木製の商品に漆を塗る〝ふきうるし〟が誰にでもおすすめです。ふきうるしキットなどを活用すると、始めやすいですよ。抗菌効果もあるので、お弁当箱の臭い移りなども防げます。簡単にできて、漆の良さを実感できるため、趣味や、日々使う道具の手入れとしても気軽に楽しめます。漆の色味も加わり味が出て、暮らしに豊かさも生まれますよ。※漆にかぶれることがあるため、必ず手袋を着用して行ってください。

市販の木の無塗装のお弁当箱やカトラリーに“ふきうるし”をしたもの。漆を重ねることで色の変化も楽しめます。
市販の木の無塗装のお弁当箱やカトラリーに“ふきうるし”をしたもの。漆を重ねることで色の変化も楽しめます。
左:ふきうるし前
右:ふきうるし後

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