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今日を初めてにする、ウェルエイジングマガジン

寝具は寝袋でいい!? ものを捨て始めたら頭の中まで片付いた。捨て活で手に入れた「今の気持ち」に素直であれる自分

『WELMAG』の特集「捨て活」では、心身の変化も感じやすくなる年代が、家や職場での役割が増える中で抱え込んでいるモノ・コトや、自分に合ってないと感じながらも続けている習慣などを手放していくヒントを集めました。何かを始めるには、まず何かを手放すことから。美容や運動、ファッション、食、仕事といったライフスタイルの切り口から、新しい生活習慣を始めるきっかけを、お届けします。

ワンルームからシンプルな暮らしについて発信するapartment301さんは、2016年4月の熊本地震をきっかけに、家の中のものを捨てる「捨て活」を始めました。

地震で壊れたいろんなものを捨てることから始まり、次第に、使わないけど取って置いていたものや、自分の暮らしに合っていないと感じるものを手放していきました。なんとベッドに布団、テーブルなど、誰もが「これは絶対必要」と疑わないような生活必需品とされるものまで手放したんだとか。

「私にとっての捨て活は、単純にものを捨ててすっきりした暮らしが手に入るということじゃないんです」というapartment301さん。

ものを捨てる判断を繰り返すことで、頭の中が整理されていき、“世間一般”に振り回されることなく自分の気持ちに素直な行動ができるようになったことがわかりました。

捨て活を通して、見えなくなっていた自分の本心に気づけた

── 2024年3月に引越しをされ、25平米から40平米の広いワンルームに移ったapartment301さんですが、引越しをきっかけに手放したものはありますか?

元々ものは少なめに暮らしていましたが、いざ新居に移ってみると、「この部屋にはいらなかった」と感じるものが少なからずあって。

それは延長コードだったり、収納棚だったり。前の家はコンセントや収納スペースが少なかったので延長コードを駆使したり、キッチン下に小さな収納棚を4つほどつくって使ったりしてたんです。収納棚はふたつ捨ててきましたが、残りのふたつと延長コードは「もしかして使うかも?」と新居に持ってきました。

でも、そうやって持ってきたものって、やっぱり使い道がないし、見た目的にも何かしっくりこない感じがして。収納棚のほうは潔く捨てました。引越しをするときって、環境は変わるのに今まで持っていたものを新しい場所でもなんとか上手く使おうという思考になりがちですが、それはもうやめようと、今回の引越しで思いました。

衣装ケースもなく、必要な服はハンガーラックにかけている

── apartment301さんの著書『捨て活で見つけた 「私」が主役のワンルームライフ』でも、捨てることを通じて自分によりフィットした暮らしに変わっていく様子が描かれています。ものを見つめ直して手放す行為は、暮らしをどんなふうに豊かにしてくれると考えますか?

捨て活って、私にとっては「ものを減らしたことですっきり暮らせてよかった」という単純な話じゃなくて、自分らしい人生を歩むきっかけをくれたものなんです。

もともと、仕事でもなんでも、「ああでもない、こうでもない」と先回りしていろいろな可能性を考えるけど、悩んだ結果、何も行動しないことが多いタイプでした。独立する前はずっと販売員だったのですが、会社では、自分の本心に蓋をして不満を溜め込んでしまうことが多かったように思います。

── 仕事をする中では、他者との関係性だったり、自分の立場だったりを考えて、「本心を言えない」場面って多いですよね

特に会社員だと、思い通りにならないことが多いので、気づかないうちに自分の本心が見えなくなってしまうことも多い。私もそうでしたが、ものを捨てていく行為を続けるうちに、自分に本当に必要なものがわかっていくようになったんです。

なんでも捨てているわけではなく、植物や小物のインテリアなど好きなものは置いておくスタンス

会社をやめたのも捨て活がきっかけです。書籍の出版や片付けアドバイザーの仕事といった個人活動の比重が大きくなっていく中で、私が求めていたのは本業よりも捨て活から広がった個人活動のほうでした。「せっかくやりたいことで可能性が見えているんだから、そっちを選んだほうがきっと楽しい」という気持ちを優先して、独立を決めたんです。

20年続けてきた会社員という働き方自体をやめるなんて、捨て活を始める前の自分では考えられないこと。ずっと、継続や積み重ねこそ正しい歳の重ね方だと思って生きてきたので。気軽にヒョイっと、その時々のやりたいことをやってしまえる自分に変わったのが、ここ数年の一番大きな変化です。

「いらないんだけれども」で残しているものから手放す

── 独立という決断の背景には、捨て活によって自分のやりたいことが明確化され、それを選べるマインドが育まれたことがあったんですね。

そうですね。やっぱり、ものがいっぱいあるときって自分の頭の中もごちゃごちゃ散らかっている状態だと思うんです。そういう状態では自分が本当にやりたいことや大事にしたいことが見えづらくなってしまうので、まずは身の回りのものから見つめ直して、徐々に手放していくことで、頭も整理されていくんじゃないかと思っています。

── 散らかっているものの中から自分が本当に必要としているものを見つけ出すためには、どういう視点で今抱えているものを見直していけばいいのでしょうか?

SNSを通じていろいろな方の声を聞いてよくあるのが、「いらないのはわかっているんだけれども、高かったから捨てられない」とか、「使っていないんだけれども思い出だから捨てられない」とか、そういった理由で手放せない人が多いということ。

だけど、使っていないんだけれども……、いらないのはわかっているんだけれども……と、「だけれども」がついてしまうものは、たいていその人が本当に必要としているものではないんです。それを手元に置いておいておくのは、今の自分の気持ちに蓋をしてしまうことでもあると思います。

── 「だけれども」の手前の言葉に本心があることが多い気がします。

いらないんだけれども……となるものは、「いらない」というのが今の自分の本心だということですよね。

世間一般が合わないなら、自分の当たり前を作り直せばいい

── その時々の自分の気持ちに正直でいることを大切にされてきたapartment301さんですが、心地よく暮らすために手放した習慣はありますか?

ひとつは、夕食をつくること。今は、夜ご飯は小腹が空いたらフルーツやチーズなど、つくらなくてもいいものをつまむ程度です。会社員時代は、健康への意識から朝夕一日2回はキッチンに立って自炊をしていましたが、それによって日付をまたぐことも多く、ストレスを感じていました。

実はあまり料理が好きではなく、夜はたくさん食べなくても平気なタイプでもあったので、思い切って、つくらないスタイルに切り替えたんです。するとストレスがなくなり、睡眠の質も上がった感じがしました。

「この行為は自分に合っていない」とわかりながらも、それまでずっと続けていたのは、「ちゃんとした人間に見られるようにしないと」と意識していたからだと思います。苦手だ、と思いながらも世間一般であろうと無理矢理続けていることってありますよね。手放してはじめて、自分には必要なかったんだと知ることができました。

私の場合、寝具もそうです。震災を機にマットレス、布団やシーツも手放し、今はソファベッドの上に寝袋を置いているだけです。

寝袋を置いているソファ

── 寝袋で寝ているんですか!?

よく驚かれます(笑)。結局、何が面倒だったかって、布団やシーツの洗濯のためにする付け替え。衛生面のために最低週に一度は洗いたいけれど、ベッドから剥がして洗濯してまた装着するという作業がもう、すごくストレスで。

そんなときにミニマリストの方々を見て、寝袋アリかもと思ったんです。寝袋って取り外してまたつけるという作業が必要ないから、ラクだなと。「合わなかったら、戻せばいいや」くらいの軽い気持ちから始めてみましたが、これが大正解。

付け替えの面倒がなくなっただけでなく、コインランドリーで丸洗いできるから清潔感が増した感じがするし、ソファベッドの上に置いているので腰が痛くなることもない。寒くないんですか?と心配されることもあるけれど、むしろ冷気が入ってくる面積が少ないから前より温かく感じます。そういったことから、みんなの当たり前に合っていないと感じたら、自分の当たり前をつくればいいのかなという考えに変わっていきましたね。

── 新居に移ったことで手放せたことはありますか?

この部屋にきて一番よかったのは、キッチンが広いこと。「広くなった家に合わせて新しいダイニングテーブルを買うんですか?」とよく聞かれたのですが、私はそもそも、料理や食べ終わったお皿をテーブルや流しまで「運ぶ」という行為を面倒に感じていたんです。

今の家はキッチンの天板を使ってご飯を食べられる広さがあるので、テーブルに運ぶ必要がなくてすごくラク。だからうちにテーブルはありません。キッチン横に置いてあるスツールに座ってご飯を食べ、そのまま食器をポイポイと流しに入れていくだけ。食事にまつわる導線が短くなったのがうれしいですね。

── 自分の力では手放せなかったものが、環境の変化によって手放せることってありますよね。最後に、これからの暮らしの中で、変わらず大切にしていきたいことはなんでしょう?

やっぱり、これからも「ものの見直し」は続けていきたいと思っています。自分のためにつくりあげたマイルールですら、歳を重ねたり、家族が増えたりなどの生活環境の変化によって、合わなくなっていくもの。だからこそ、「今にフィットさせるように変化させていく」という臨機応変なスタンスで、自分に合った暮らしをつくっていきたいと思っています。

Interviewee

apartment301

持たない暮らしをたのしむミニマリスト。販売員として働く中で、2016年の熊本地震をきっかけに「捨て活」を実践し始める。捨て活によって快適なワンルームでの暮らしを実現していく様子がInstagramで共感を集め、2023年に初の書籍『捨て活で見つけた 「私」が主役のワンルームライフ』(主婦の友社)出版。同年夏からオンラインでお部屋の片付けをサポートする片付けアドバイザーの仕事も始める。

CREDIT

Interview&Text / Miki Osanai
Photo / Yoshiko Otsuka
Edit / Quishin
Production / Quishin Inc.

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